一一一一源大納言雅俊一生不犯の鐘打たせる事

現代語訳

  1. `これも昔の話、京極の源大納言雅俊という人がいらした
  2. `法事の際、仏前で僧に鐘を打たせるのを、一生不犯の者から選んで講を行ったが、ある僧が礼盤に上ったところ、少し妙な顔つきになり、撞木を取って振り回し、打ちもせず、しばらくそのままでいるため、大納言が
  3. `いったいどうしたのか
  4. `と思われ、少しの間何も言わないことを人々も不審に思っていたさなか、この僧がわななくような声で
  5. `せんずりはよいのでしょうか
  6. `と言ったので、みんなは顎が外れるほど笑っていると、一人の侍が
  7. `せんずりはいくつになるまでなさったのであるか
  8. `と尋ねれば、僧は、首をひねり
  9. `たしか、昨夜もしました
  10. `と言ったので、みんな大笑いした
  11. `そのどさくさに紛れて早々と逃げてしまったという