三三五小式部内侍定頼卿の経にめでたる事
現代語訳
- `昔、小式部内侍に、中納言・藤原定頼が情を交わしていた
- `それにまた、時の関白・藤原教通も通っていた
- `局に入って、臥していたのを知らなかったのか、中納言がやって来て、戸を叩くので、局の人が
- `しかじか
- `と言ったのだろう、沓を履いて行ったが、少し歩み退き、経をいきなり声高に読みはじめた
- `二声ほどまでは、小式部内侍が、急に耳を立てるようにしたので、この入って臥していた人が
- `あやしい
- `思っていると、少し声が遠くなるようで、四声五声ほど、行きもせず読んだ時
- `わっ
- `と言って、後ろへのけぞり返ってしまった
- `この入って臥していた人が
- `あのときほど堪えがたく恥ずかしかったことはなかった
- `と、後に語ったという