四〇樵夫歌の事

現代語訳

  1. `昔、木こりが山守に斧を取られ
  2. `侘しい
  3. `心憂い
  4. `と思って、頬杖をついていた
  5. `山守が見て
  6. `気の利いたことを言え
  7. `斧を返してやる
  8. `と言うので
  9. `つまらぬものさえなくては困る世の中で、よきをとられて自分はどうしたらいいのか
  10. `と詠んだので、山守は
  11. `歌を返そう
  12. `と思い
  13. `うう、うう
  14. `と呻いたが、できなかった
  15. `そうして、斧を返してやると
  16. `ああよかった
  17. `と思ったという
  18. `人はただ歌をよく考えて詠むべきだと見える