一二六四式部大輔実重賀茂の御正体拝み見る事
現代語訳
- `これも昔の話、式部大夫・平実重は賀茂神社へ参ることにかけて並ぶ者がなかった
- `前世の運をおろそかにし、身に余るご利益ににあずかることはできなかった
- `ある人が夢で、賀茂の大明神が
- `また実重が来た
- `なにか言っているぞ
- `とお嘆きになっているのを見た
- `実重が御本体を拝み奉りたく祈ると、ある夜、下賀茂神社へ参詣の後、上賀茂神社へ参る間、二社の間にあった神社のそばで、行幸にお会いした
- `百官供奉は常のとおりである
- `実重が、傍らの藪に隠れて見ていると、帝の御輿の中に金泥の経典が一巻立て掛けられていた
- `その外題には
- `一称南無仏
- `皆已成仏道
- `と書かれていた
- `夢はそこで覚めたという