二一〇〇下野武正大風雨の日法性寺殿に参る事
現代語訳
- `これも昔の話、下野武正という舎人は、法性寺殿・藤原忠通に仕えていた
- `ある日、大風が吹き、大雨が降り、京中の家がみな壊れ破れた折、法性寺殿が近衛殿にいらしたが、南面の方で人の騒ぐ声がする
- `誰だろう
- `と思い、ご覧になれば、武正が、赤香の裃に蓑と笠を着て、蓑の上から縄を帯に締め、檜笠の上を、さらに下顎に縄で絡げ付け、鹿杖を突き、走り回ってなにやらやっている
- `実に、その姿は似ているものさえ思いつかない
- `殿は、南面へ出て御簾よりご覧になって、あさましく思われ、馬をお与えになった