二一二五保輔盗人たる事
現代語訳
- `昔、丹後守・藤原保昌の弟に、兵衛尉で五位の冠を賜った保輔という者がいた
- `盗人の首領であった
- `家は姉小路の南、高倉小路の東にあった
- `家の奥に蔵を建て、下を深い井戸のように掘って、太刀、鞍、鎧、兜、絹、布など、様々な物を売る者を呼び入れ、言い値で買い
- `代金を払ってやれ
- `と言い
- `奥の蔵の方へ連れて行け
- `と言って
- `代金を頂戴します
- `と出向いたのを、蔵の中へ呼び入れつつ、掘った穴へ突き落とし突き落としして、持ってきた物を取った
- `この保輔のところへ物を持ち込んだのの戻ったためしがない
- `このことを物売りが怪しく思っても、埋め殺してしまえば、このことを喋る者はいなかった
- `それのみならず、京中をのし歩き、盗みをして過ごしていた
- `このことは、うすうす噂にはなっていたが、どういうわけか、捕まることもなく過ぎていった