現代語訳 `これも昔の話、丹後守・藤原保昌が国へ下る時、与謝野山で白髪の武士一騎と出会った `路傍の木の下に馬を入れ、立てているので、国司の郎党たちが `あの老人はなぜ馬から下りないのか `けしからん `咎めて下ろそう `と言った `そのとき国司が `一人当千の馬の立て方だ `尋常ではない人だ `咎めてはならぬ `と制し、通り過ぎると、三町ほど行った辺りで、数多の兵を率いた大矢の左衛門尉・平致経と出会った `国司が挨拶をしていた折、致経が `この辺りで一人の老人と会われませんでしたか `我が父・平五大夫です `まったくの田舎者で、しきたりなどわきまえていないので、さぞ無礼なふるまいをしたことでしょう `と言った `致経が行った後で `道理でな `と言ったという