原文と現代語訳
- 唐橋中将といふ人の子に行雅僧都とて教相の人の師する僧ありけり
- 気のあがる病ありて年のやうやうたくるほどに鼻の中ふたがりて息も出でがたかりければさまざまにつくろひけれど煩はしくなりて目眉額なども腫れまどひてうち覆ひければ物も見えず二の舞の面のやうに見えけるがただ恐ろしく鬼の顔になりて目は頂の方につき額のほど鼻になりなどして後は坊のうちの人にも見えず籠り居て年久しくありて猶煩はしくなりて死にけり
- 唐橋中将という人の子に行雅僧都という密教の教義を学ぶ人の師事する僧がいた
- のぼせる病があって、年が経つにつれ鼻の中が塞がって息ができにくくなったので、さまざま治そうとしたがひどくなり、目・眉・額なども腫れあがって顔面を覆うので物も見えず、二の舞の面のように見えていたが、ただ恐ろしく鬼の顔になって、目はてっぺんの方につき、額のあたりが鼻になるなどして、後は坊の内の人にも会わず引きこもり、長年そうするうちにさらにひどくなって死んだという
- かかる病もある事にこそありけれ
- こんな病も現実にあるのだ